1.病態と症状
全身性エリテマトーデスは、膠原病の代表的な病気で、わが国の患者数は約 10 万人と推測されています。妊娠可能な 20 歳代から 40 歳代の女性に好発し(男女比約 1:10) 皮膚、関節、心臓、腎臓、脳、神経、血管など全身臓器に障害をもたらすことがある免疫の病気です。エリテマトーデスとは、紅斑を意味する言葉です。全身性エリテマ トーデスの英語名 Systemic Lupus Erythematosus を略して SLE と呼ばれます。
全身症状: 全身倦怠感、易疲労感、発熱などが先行することが多いです。
皮膚・粘膜症状:蝶形紅斑とディスコイド疹が特徴的で、日光にあたることで憎悪します。ディスコイド疹は顔面、耳介、頭部、関 節背面などによくみられ、当初 は紅斑ですが、やがて硬結、角化、瘢痕、萎縮をきたします。このほか凍瘡様皮疹、 頭髪の脱毛、日光過敏も本症に特徴的です。
筋・関節症状:筋肉痛、関節痛は急性期によくみられます。関節炎もみられるが、 骨破壊を伴うことはないのが特徴です。
腎症状: 糸球体腎炎(ループス腎炎)は約半数の症例で出現し、放置すると重篤となります。
神経症状:中枢神経症状を呈する場合は重症です(CNSループス)。うつ状態、失見当識、妄想などの精神症状と痙攣、脳血管障害がよくみられます。
心血管症状: 心外膜炎はよくみられ、タンポナーデとなることもあります。心筋炎を起こすと、頻脈、不整脈が出現します。
肺症状: 胸膜炎は急性期によくみられ、このほか、間質性肺炎、細胞出血、肺高血圧症は予後不良の病態として注意が必要です。
消化器症状: 腹痛がみられる場合には、腸間膜血管炎やループス腹膜炎に注意が必要です。
血液症状: 溶血性貧血、白血球減少や血小板減少も認められ、末梢での破壊によると考えられています。
その他: リンパ節腫脹は急性期によくみられます。
(公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターホームページより掲載)
2.検査と診断
SLE の診断は、特徴的な症状の組合わせと検査の結果を総合的に判断して行われま す。診断には、アメリカリウマチ学会の SLE 分類基準を参考にします。SLE は同じ病名がついても一人一人で病気の広がりや活動性が異なります。その人に最適の治療方針を立てるには、病名診断がついたら、次のステップとして、病気の広がり(臓器病変)と活動性を評価するための検査をすることが必要です。
◆SLE の分類基準(米国リウマチ学会 1997 年改訂基準より)
頬部紅斑
円盤状紅斑
光線過敏症
口腔内潰瘍
関節炎
漿膜炎 (a.胸膜炎 or b.心膜炎)
腎障害 (a.持続性蛋白尿 or b. 細胞性円柱)
神経障害 (a.痙攣 or b.精神障害)
血液学的異常 ( a.溶血性貧血 or b.白血球減少症 or c.リンパ球減少症 or d.血小板減少症)
免疫学的異常( a.抗DNA抗体高値 or b.抗Sm抗体陽性 or c.抗リン脂質抗体陽性
抗核抗体
◆観察期間中、経時的或は同時に 11 項目中4項目以上存在すれば SLE と分類する。
3.治療
SLE の治療は、急性期症状のコントロール、再燃の予防、再燃時の治療、臓器病変の治療、合併症の治療、治療に伴う副作用の防止と副作用が起きた場合の治療などが あります。
急性期症状のコントロールには、ステロイド剤が第一選択となります。活動性、重症度に応じて初期治療量が決められます。最初に十分量を用いて活動性を抑えた後、徐々に減量して維持量に移行します。このようなステロイドの上手な使い方により、 SLE の予後が著しく改善されました。ステロイド治療だけでは抑えきれない臓器病変に対しては、免疫抑制薬を使います。大量ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法を行う場合もあります。
SLE の再燃予防には、日常生活の管理が重要です。病気が安定している寛解期にも、過労、ストレス、睡眠不足、紫外線、寒冷などを避けるようにしましょう。
北陸リウマチ膠原病支援ネットワーク パンフレット 第3版より引用
執筆協力者(順不同) 加藤真一(上荒屋クリニック)、長谷川稔(福井大学)、梅原久範(長浜病院))、
清水正樹、山田和徳、 鈴木康倫、藤井博、川野充弘(以上金沢大学)
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