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「ベーチェット病」について

1. 病態と症状

ベーチェット病は、再発性の口腔内アフタ性潰瘍、結節紅斑などの皮膚症状、外陰部潰瘍、眼病変を4大主症状とする原因不明の炎症疾患です。特殊な場合を除き、一 定の部位の炎症が慢性に持続するのではなく、急性の炎症が反復し、増悪と寛解を繰り返すという特徴があります。

ベーチェット病はトルコ、中東、中国、日本を結ぶ帯状のシルクロードに沿った地 域に多く、シルクロード病とも呼ばれています。本邦における推定患者数は約 2 万人 程度で、性差はなく(重症の眼病変は男性に多い)発病年齢は 30 歳代にピークがあります。近年、新規発症が減少傾向で、患者年齢が 50 歳前後と高齢化しています。

病因は不明ですが、何らかの遺伝的素因と細菌感染などの環境要因が組み合わさっ て発症に至ると考えられています。原因遺伝子として、HLA-B51(ヒト白血球抗原の一 種)を有する人に発症が多いことが知られていますが、家族内発症はまれです。



2. 診断基準と病型

一般的には、ベーチェット病の診断は 1987 年に改定された厚生労働省特定疾患調査研究班の診断基準により行われています。1 つ 1 つの主症状、副症状の有無を確認することと他疾患の除外が診断上重要です。発症当初からすべての症状がそろうことは稀で、種々の症状が経時的に出没することが多いです。

1987 年の厚生労働省研究班の診断基準より、主症状 4 つすべてを認められるものを 完全型、それ以外を症状の数に応じて不全型・疑い・特殊病型に分類します。

◇病型診断の基準◇

  1. 完全型 (主症状 4 つ・・・再発性アフタ性口腔潰瘍・皮膚症状・眼症状・外陰部潰瘍)

  2. 不全型 (主症状 3 つ、あるいは 2 つと副症状 2 つ・眼症状+主症状 1 つか 2 つ)

  3. 疑い (主症状の一部が出没)

  4. 特殊病型 (a.腸管ベーチェット病 b.血管ベーチェット病 c.神経ベ-チェット病)



3. 治療

日常生活では、本症の増悪因子である気象条件・感染・手術・外傷・月経・ストレ スに留意し、避けられる要因はなるべく避けるよう指導します。また、虫歯やその他の感染巣(皮膚の膿瘍など)がある場合は必ずその治療を行うようにします。さらに、毎食後必ず歯磨きと口腔内の洗浄をかかさないよう指導します。

口腔内アフタ、陰部潰瘍、皮膚病変に対しては、原則としてステロイドの外用を中心とした局所療法で対応します。軽症例に対しては、コルヒチンや抗アレルギー剤の服用が発作を減少させることがあります。

重篤な視力障害を残しうる眼病変や生命予後に影響を及ぼす特殊病型(神経・血管・ 腸管ベーチェット病)に対しては、ステロイドを含む積極的な薬物療法を行います。近年、難治例に対して生物学的製剤の抗 TNF-a 抗体が使用されるようになりました。

ベーチェット病全般の活動性の指標としては、血沈・CRP・末梢血白血球数が用いられます。また、眼病変のモニタリングとしては、症状の出現頻度に応じて眼底検査を行います。慢性進行型の神経ベーチェット病の患者様においては、綿密な活動性のモニタリングが必要です。半年に 1 回髄液の検査と頭部 MRI 検査を行って、活動性の評価を行います。


 

北陸リウマチ膠原病支援ネットワーク パンフレット 第3版より引用

執筆協力者(順不同) 加藤真一(上荒屋クリニック)、長谷川稔(福井大学)、梅原久範(長浜病院)、

清水正樹、山田和徳、 鈴木康倫、藤井博、川野充弘(以上金沢大学)

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