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「巨細胞性動脈炎」について

1. 病気の概要

巨細胞性動脈炎は、大きな血管の壁に炎症(火事)が起きる病気で、血管炎と呼ばれる病気のグループに含まれます。少なくとも 50 歳以上と高齢の方に起こり、 侵されるのは主に頭頸部の血管です。本疾患は 2015 年に医療給付対象疾患に指定 されました。

適切なタイミングでステロイドを投与することにより、治せる病気です。



2. 症状

全身の炎症を反映して発熱、倦怠感、体重減少などの症状が起こります。 巨細胞性動脈炎では、侵される頭頸部の血管の血流不全によって症状が起こります。浅側頭動脈といって、こめかみを触れると拍動を感じる血管が侵されると、典型的にはその部位の痛みが起こります。他に眼に見えるこめかみの動脈肥厚、 その部位の拍動が触れなくなる、食べ物を噛んでいるうちに血流不足になって顎 が痛くなり噛み続けられなくなる(顎跛行(がくはこう))ことも良くあります。 眼動脈の血流不全では、視界がぼやけるのみでなく、最悪失明に至るという症状が本疾患最大の注意点ですが、幸いに頻度は高くありません。頭頸部の血管のみならず、胸部や腹部の太い血管に炎症が起こり、血流不全を来すことでそれぞれの部位で症状を認めることもあります。



3. 診断

巨細胞性動脈炎の診断は、典型的には新たに頭痛を認めた高齢者で診察上側頭 動脈に異常があり、採血で炎症反応が高い場合に強く疑われます。確実に診断するためには、こめかみにある側頭動脈の一部を切除して顕微鏡で観察し、炎症(火 事)が起こっていることを目で確認することが重要です。これを生検と言います。 巨細胞性動脈炎という名前は、顕微鏡で観察すると血管に核をたくさん持つ巨大 な細胞がみられることに由来します。確実な診断に加え、視力障害など血流不全 に伴う症状のある方が、重症例として医療給付の対象になります。



4. 治療

巨細胞性動脈炎では、失明の恐れがある場合には やかにステロイド大量療法 を行う必要があります。熱や頭痛などの症状をみながら、通常は 4 週間の初期治 療の後に漸減します。ステロイドの効果が弱い(抵抗性)、減量に伴い再燃する症例では、メトトレキサートなどの免疫抑制薬を併用します。再燃する場合症状が重大なので、長く少量のステロイドを続ける患者さんも少なくありません。

高齢者に起こる疾患ですので、ステロイド投与にあたっては感染症、骨粗鬆症、 生活習慣病の悪化などに注意が必要です。



 

北陸リウマチ膠原病支援ネットワーク パンフレット 第3版より引用

執筆協力者(順不同) 加藤真一(上荒屋クリニック)、長谷川稔(福井大学)、梅原久範(長浜病院)、

清水正樹、山田和徳、鈴木康倫、藤井博、川野充弘(以上金沢大学)

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