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「混合性結合組織病」について

1. 病態と症状

混合性結合組織病は、1972 年に Sharp らにより提唱された症候群で、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(SSc)、多発性筋炎(PM/DM)の症状を併せ持っていますが、 おのおのの症状は比較的軽症であることが特徴です。また、血中に高力値の抗 U1-RNP 抗体が単独陽性であることを特徴とします。混合性結合組織病でよくみられる症状は、 レイノー現象と手指のソーセージ様腫脹、関節炎です。そして、肺高血圧症の合併が多いことが知られています。

混合性結合組織病は、経過中に SLE に移行する症例や、皮膚硬化、食道病変、間質性肺炎が顕在化し強皮症へ移行する症例や、持続性関節炎を起こし関節リウマチを合併する症例など、2 つ以上の膠原病が重複(オーバーラップ症候群)することもあり ます。そのために、症状の移行を定期的にモニターし、尿検査で蛋白尿、血液検査で 白血球減少、血小板減少を見ていく必要があります。一方、免疫学的検査では、血清 補体価、抗 DNA 抗体、抗 Sm 抗体など、SLE の診断基準を満たすかを確認していくことが重要です。混合性結合組織病では約 30%に抗 SS-A 抗体が陽性であり、経過中にシ ェーグレン症候群を呈する症例もあります。



2. 検査と診断

混合性結合組織病の診断を確定する際、日本では厚生労働省の診断基準が使用されます。注意点として、抗 U1-RNP 抗体は混合性結合組織病に特異的な抗核抗体ではな く、SLE や強皮症、多発性筋炎・皮膚炎、関節リウマチなど他の膠原病・リウマチ性 疾患でも認められること、逆に混合所見があっても抗 U1-RNP 抗体が陰性のこともあ ります。

■ MCTD の診断基準

I 共通所見 1.レイノー現象 2.指または手背の腫脹

II 免疫学的所見 抗U1-RNP抗体陽性

III 混合所見

A. 全身性エリテマトーデス様所見

1.多発関節痛 2.リンパ節腫脹 3.顔面紅斑 4.心膜炎または胸膜炎

5.白血球減少(4,000/μl以下)または血小板減少(100,000/μl以下)

B. 強皮症様所見

1.手指に局限した皮膚硬化 2.肺線維症、拘束性換気障害(%VC=80%以下)

または肺拡散能低下(%DLco=70%以下) 3.食道蠕動低下または拡張

C.多発性筋炎様所見

1.筋力低下 2.筋原性酵素(CK)上昇 3.筋電図における筋原性異常所見

■ 診断

1. Iの 1 所見以上が陽性

2. IIの所見が陽性

3. IIIの A,B,C 項のうち、2 項以上につき、それぞれ 1 所見以上が

陽性以上の 3 項目を満たす場合を混合性結合組織病と診断する。(付記省略)



3. 治療

混合性結合性組織病の初期にはプレドニゾロン(PSL)換算で 20〜30mg/日を 2〜3 週間程度続け、以後 2 週間間隔で 10%ずつ減量し、7.5mg〜5mg/日を維持量とします。 これで改善されるのは、紅斑、多発関節痛、リンパ腺腫脹、筋炎などの炎症です。また、検査所見としては高ガンマグロブリン血症や筋原性酵素の正常化などが認められます。白血球減少はステロイド薬の増量時に回復し、その減量で再度減少しやすいで す。

ステロイド薬に抵抗性を示す所見としてはレイノー現象や手指腫脹で、特に寒冷期になると再発しやすいです。その他、近位皮膚硬化、肺線維症、肺高血圧症、食道運 動低下などの強皮症所見は治療に抵抗性を示します。

胸・心膜炎、ネフローゼ型腎症、肺高血圧症、間質性肺炎、無菌性髄膜炎、強度の筋炎などが存在する症例に対しては、大量のステロイド(プレドニン 40〜60mg/日) の投与が必要となります。遷延化する時にはメチルプレドニゾロンによるパルス療法の追加が有効なこともあります。

肺高血圧症は徐々に、時として急に進行するので、注意深い観察が重要です。近 年、肺高血圧症に対して、効果のある新薬が多数開発されました。



 

北陸リウマチ膠原病支援ネットワーク パンフレット 第3版より引用

執筆協力者(順不同) 加藤真一(上荒屋クリニック)、長谷川稔(福井大学)、梅原久範(長浜病院)、

清水正樹、山田和徳、鈴木康倫、藤井博、川野充弘(以上金沢大学)

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