年の瀬の慌ただしい中、いかがお過ごしでしょうか。
もう3年前になりますが、北陸リウマチ膠原病支援ネットワークの集いでお話させていただいた「腎臓」について改めて理解を深めて頂けたらと存じます。
●腎臓は何をしている臓器?
一言でいうと尿を作っている臓器です。尿は何のために作られるかというと、余計な水分や毒素を体の外に出すことで、体のバランスを一定の状態に保つためです。それ以外にも色んな働きがあり、エリスロポエチンという血液をつくるホルモンを分泌したり、ビタミンDという骨を強くするホルモンを活性化したり、血圧のコントロールを行っています。
このため、逆に腎臓の働きが弱ってしまうと、水分が過剰に体に溜まったり(むくみ、心不全、肺水腫)、貧血になったり、骨が弱くなってしまったり、血圧が高くなってしまったり、毒素(カリウムなど)が貯まるなど、様々な症状が出ることになります。さらに、虚血性心疾患や脳血管疾患を起こす危険性が高まります。
●腎臓の働きはどうやって見る?
皆様は膠原病で外来を受診した際に血液検査や尿検査を受けると思いますが、腎臓の働きは何でチェックするかご存知でしょうか。腎臓の働きを見る方法は様々なものがありますが、よく使われるのは血清クレアチニン(creatinine; Cr, CRE)と推算GFR(glomerular filtration rate: eGFR)です。分かりやすいのは後者で、後ろに%をつけると、「大体何%腎臓が働いているか」というイメージを持つことができます。これは年齢と性別とクレアチニンで算出されるもので、現在ほとんどの医療機関が血清クレアチニンを測定すると自動的に推算GFRも検査結果表に表示してくれます。表示されていなければ、インターネット上で簡単に算出できますので、ぜひ一度試してみて下さい(図1.日本腎臓学会のサイト:https://jsn.or.jp/general/check/)。
図1 腎機能測定ツール(日本腎臓学会ホームページhttps://jsn.or.jp/general/check/)
●腎機能のいい悪いはどう判断する?
上記で推算GFRが出てきました。では、それはいいのか、悪いのか、どう判断すればいいでしょうか。慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)のステージは5段階(G1~G5)ありますが、この推算GFRと蛋白尿の2つによって決まります(図2)。大まかな目安として、推算GFR 30~60は軽度から中等度の腎機能低下(黄色、オレンジ)、推算GFR 30以下は高度の腎機能低下(赤)と判断します。最初にお話した腎臓の働きが落ちたときの様々な症状は、推算GFR 30以下(赤)で出てきやすくなりますので、主治医の先生によく見てもらって下さい。推算GFR 30~60(黄色、オレンジ)はほとんど無症状ですが、薬によっては注意が必要なものもありますので、主治医の先生によく相談しましょう。歳を重ねると推算GFRは段々低下するものですので、高齢になってくるとほぼ皆様がこの領域に入ります。
一つだけ推算GFRの注意点として、筋肉が落ちて痩せている方では高く見積もってしまうことです。つまり、本当は腎臓の働きが落ちているのに、推算GFRではよく見えてしまうことがあります。その場合は、シスタチンC(cystatin C)という項目を血液検査で測ると、より正確な腎臓の働きがわかります。
図2 CKDの重症度分類(CKD診療ガイド2012 p3 表2)
●尿検査の見方
尿検査では尿蛋白と尿潜血が大事です。特に尿蛋白が出ていると、腎臓の働きが「今」良くても、将来的に腎臓が悪くなりやすくなることが分かっています。図2をもう一度みてみると、同じ推算GFRであっても尿蛋白が正常よりも高度蛋白尿の方が、リスクが高くなっていますね。基本的には、尿蛋白1+以上が繰り返し確認されるならば、高度蛋白尿と捉えていただければよいです。
尿潜血は、腎臓そのものの病気、あるいは尿管や膀胱の病気の有無のサインとして用いられます。尿沈渣で、赤血球の変形、顆粒円柱や赤血球円柱がある場合は腎臓そのものの病気の存在が疑われます。これらがなければ、尿路結石がないか、また尿細胞診で悪い細胞がいないかをチェックすることになります。高齢の方では、特に異常がなくても尿潜血が陽性となることがあります。
腎臓の働きの見方と捉え方について、血液検査や尿検査の見方についてお話しました。さらにご興味ある方は日本腎臓学会のホームページに資料がたくさんありますので、ぜひご覧になって下さい(https://jsn.or.jp/general/)。普段の検査の中で腎臓にも興味をもって頂けますと幸いです。
★ 2020年12月28日 金沢大学附属病院リウマチ・膠原病内科 原 怜史 先生より原稿を寄せていただきました。
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