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「若年性特発性関節炎(JIA)」について

1. 病態と症状

若年性特発性関節炎は原因不明の病気で、主に関節の炎症が持続的に起こる疾患です。大きく 2 つのタイプに分類され、2 週間以上の発熱(弛張熱)や発疹、リンパ節腫脹などの全身症状がメインである全身型と、発熱などは起こさず、関節痛や関節の腫れなど関節症状がメインである関節型があります。特に関節型の場合は、罹患関節数 が 4 ヵ所以内だと少関節型、5 関節以上だと多関節型と分類します。日本での頻度は 10 万人当たり 10-15 人程度です。



2. 診断

若年性特発性関節炎は身体所見、血液検査、画像検査の結果から総合的に診断します。

血液検査では CRP やフェリチンなどの炎症反応が上昇します。関節炎のマーカーである MMP-3 (マトリックスメタロプロテアーゼ 3) が高値であることもあります。関節型の場合は、リウマチ因子(RF)や抗 CCP 抗体などの血清因子が陽性の場合もあります。

画像検査では関節超音波検査による血流の亢進や、 影 MRI による関節液貯留、滑膜肥厚を評価し、関節炎の存在を確認します。



3. 合併症

全身型の場合は治療が遅れると、炎症が持続することによって全身の血管や臓器にダメージを来すマクロファージ活性化症候群(MAS)を引き起こします。MAS になると最悪の場合、死に至ることもあるので大変危険です。関節型(特に少関節型)の場合は、 ブドウ膜炎(眼の炎症)を合併することがあります。

また関節炎の長期間の持続によって関節破壊をきたすこともあります。



4. 治療

タイプによって違いますが、全身型の場合はステロイドの点滴や内服、関節型の場合は消炎鎮痛剤(NSAID)とメトトレキサート(MTX)と呼ばれる内服薬が中心となります。またそれらの治療薬でコントロールが難しい場合は、免疫抑制剤の併用や、生物学的製剤(血液中の炎症に関与するサイトカインと呼ばれる物質の働きを抑えるお薬)を使用することもあります。

従来治療が困難であった若年性特発性関節炎も、治療薬の進歩により寛解(症状がない状態)の達成や、薬剤の中止ができるようになってきました。関節予後も大きく改善してきています。疾患の頻度が稀なこともあり、全国の小児リウマチ医が力を合わせて、より良い治療法の確立など日々努力しています。何かわからないことや不安なことがあれば、お近くの小児リウマチ専門医にご相談下さい。



 

北陸リウマチ膠原病支援ネットワーク パンフレット 第3版より引用

執筆協力者(順不同) 加藤真一(上荒屋クリニック)、長谷川稔(福井大学)、梅原久範(長浜病院)、

清水正樹、山田和徳、鈴木康倫、藤井博、川野充弘(以上金沢大学)

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