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「関節リウマチ」について

1.病態と症状

関節リウマチ(RA)は、 現在までのところ、いくつかの複合した要因によ り、免疫の異常と関連して、全身の関節に炎症が起こり、軟骨や骨を破壊 して、変形に至る疾患と考えられています。遺伝子解析技術の進歩にてRAの 発症に関連する遺伝子領域が次々と報告されています。一方、喫煙や歯周病より誘発される変性タンパク(シトルリン化タンパク)に対する反応や、一部の感染症の影響も認められます。このように、RAは遺伝と環境の複合的要因にて発症すると考えられています。RAの有病率は0.5-1%程度であり、30-50 歳代の女性に好発し、男女比は1:3~4程度とされています。

RAの症状としては、朝のこわばりや全身の関節の疼痛や腫れが主であり、 数週間にわたり、複数の関節の疼痛や腫れが続けば、もっとも疑われる疾患のひとつとなります。関節炎の評価には、MRIとともに、最近では関節エコ ーが注目されています。X-P上の変化が起こる前の骨の変化や、関節炎の強さをリアルタイムで見ることができ、侵襲性も少ないことより、広く行われるようになってきています。

関節以外の全身症状として、微熱、全身倦怠感を伴うこともあり、目や口の乾き (シェーグ レン症候群) など涙腺や唾液腺、さらに皮膚、 腎臓、肺などの臓器の症状を伴うこともあり、膠原病の1つとして位置づけられます。



2. 診断

RAの診断には1987年に作成された米国リウマチ学会の分類基準が 長く用いられました。しかし、RAを関節破壊の前に早期に診断する基準としては不向きとされ、2010年に米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が協同して新分類基準 を作成しました。現在日本でも主にこの新分類基準にしたがってRAの診断が行われています。(下表参照) 下表にて10点満点中6点以上であれば、RAに分類さ れることになります。(最低一つの関節腫脹があり、他疾患が除外できることが条件となります。)




3.治療

RAの薬物治療は、最近の分子生物学や遺伝子工学における基礎医学の成果を 、臨床的に応用することにもっとも早期に成功した分野のひとつと言えます。 日本リウマチ学会のRA診療ガイドライン2014は、ほぼ2013年度の欧州リウマチ学会の治療指針を踏襲したものとなっていますが、これまで専門医のコツやカンに頼りがちであった治療も、関節症状の寛解、関節破壊の抑制、生活活動能力の維持・向上という目標を数値化し、目標値に向かって段階的に治療を行うという治療体系が構築されました。

メトトレキサート(MTX)はRA薬物治療の中心で、極めて有効性の高い薬剤であり、2011年には、それ以前の倍量の16mg/週が認められました。ただし、副作用にも注意する必要があり、専門医により慎重に調整する必要があります。 その他やや効果は劣るものの、ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タク ロリムス、イグラチモド等があり、その複数剤の組み合わせにより良好な結果を得られることも注目されています。生物学的薬剤の登場は、パラダイムシフトと言われる程、劇的なRA治療環境の向上をもたらしました。早期の使 用により免疫学的寛解という、免疫異常のない治癒と言える状態に導ける可 能性が示されています。一方、生物学的製剤の中止より再燃する例も多く、 定期的に休薬や減量を行いながら寛解を維持する、ドラッグホリデイの考え方も話題となっています。現在日本では7種類の生物学的製剤が使用できますが、いずれも注射製剤です。2013年に認可されたトファシチニブは、細胞内 でのシグナル伝達を抑制するJAK阻害剤に分類される内服薬で、生物学的製剤 と同等の効果があるとされます。また2014年には一部の生物学的製剤の後発品(バイオシミラーと呼ばれます)が認可されました。値段が少し安くなりますが、日本人に対する長期の効果や安全性はこれからも検証が必要と思わ れます。RAは経済的負担が多くなりがちですが、高額医療費の負担軽減措置 や、身体障害者手帳の取得に該当しないか、主治医やケースワーカーに相談してみると良いと思われます。

 

北陸リウマチ膠原病支援ネットワーク パンフレット 第3版より引用

執筆協力者(順不同) 加藤真一(上荒屋クリニック)、長谷川稔(福井大学)、梅原久範(長浜病院))、

清水正樹、山田和徳、 鈴木康倫、藤井博、川野充弘(以上金沢大学)

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