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ネットワークの皆さん!運動不足になっていませんか?

近頃、リウマチ外来をしていると、

「新型コロナのことが心配で夜眠れない」、

「関節が痛くなった」、

「足が浮いてきた」、

「トイレに行くのにも苦労するようになった」、

というようなことを訴えられる患者様が増えてきています。

こういう訴えをされる方の話をよく聞くと、

「新型コロナが流行ってから体を動かさなくなった」

とおっしゃられることが多いように思います。

「新型コロナのことが心配で夜眠れない」方へ

このコラムでは運動について述べたいのですが、それどころではなく、リウマチの薬を使っているとコロナにかかって重症化するのではないか心配だ、という方もおられると思います。そこで本題に入る前に日本リウマチ学会のホームページに記載されている内容をご紹介します。

日本リウマチ学会のホームページには、「現時点では、免疫抑制薬、生物学的製剤、抗リウマチ薬、ステロイド治療を受けている方がCOVID-19にかかり易くなるというデータはありません。」と書かれています。その他いろいろ心配なことが多いと思いますので、一度日本リウマチ学会のホームページ(https://www.ryumachi-jp.com/information/medical/covid-19_2/)にアクセスされてはいかがでしょう。

さて、本題の運動についてです。

「ステイホーム」が言われだした頃から「関節が痛くなった」方へ

リウマチの分野では筋肉を動かすと抗炎症物質が分泌される(マイオカイン)ということが注目されています。それを受けて、私たちの施設ではリウマチの患者様(全員女性で、年齢が高い方が多い)に協力していただいて、下肢の低強度の運動を2か月間していただく臨床試験を実施しました。その結果、圧痛関節数、腫脹関節数、歩行速度、握力が改善するという成果を得ました。私たちはこの結果を踏まえて、関節保護に留意しながら筋肉を鍛えると関節リウマチ患者様の関節炎が軽減する可能性があると考えるようになりました。「ステイホーム」が言われたころから痛みが強くなった方は、適度な運動をすることで痛みが軽減するかもしれませんので、適度な運動を試してみられたらどうでしょうか。

「足が浮いてきた」方へ

四足歩行をしている動物と違って、人間は二足歩行をしているので足が心臓よりかなり下方にあります。したがって、人間の場合、重力の関係で足に下がった血液は心臓まで戻りにくくなります。それを補うのが足の筋肉です。足の筋肉が収縮することで足にたまった血液が心臓にかえります。ところが、足の運動をしないでいると血液が足にたまり、足が浮いてしまいます。足の浮きが気になる方は、お家で足の運動をされてはいかがでしょうか。

「トイレに行くのにも苦労するようになった」方へ

京都大学の先生方の調査によると、「日本人関節リウマチ患者65歳以上の51%がサルコペニアである」と報告されています。サルコペニアというのは、筋肉量と筋力が減少し、体が不自由になるだけではなく、全身の様々な病気を起こす病態です。ただでさえリウマチ患者様は筋肉量が落ちているのに、新型コロナがこわくて自宅で巣ごもりのような生活をしていればさらにサルコペニアが進行する可能性があります。意識的に体を動かすことが大切です。

「運動によってウィルスに強い体を手に入れる」

激しい運動は免疫力を落とすが、適度な運動は免疫力を高める、と言われています。新型コロナウィルスに対する研究はまだありませんが、一般的には適度な運動を継続するとウィルスに強い体になると考えられています。その機序にはいくつか考えられているものがあります。そのうちの一つを紹介すると、適度な運動をするとNK細胞が活性化するというのがあります。NK細胞というのはウィルスに感染した細胞や癌細胞を壊す働きのあるリンパ球です。

ついでに

コロナともリウマチとも直接関連ありませんが、テレビなどで「運動後に牛乳を飲むと体によい」という意見を時々耳にします。この根拠になっていると思われるのが、能勢博著:BLUE BACKS「ウォーキングの科学」講談社、です。医学書ではなく一般書です。医学的知識がないと難解な本ですが、結構面白い本なので、興味のある方は手にとってみられたらいかがでしょうか。

最後に

運動には様々なよい効果がありますが、やりすぎは逆効果になります。

また、心臓、肺、血管などに異常のある方は思いもよらない病気が発生することもあります。

運動をされる前に主治医の先生とご相談されることをおすすめします。



★ 2020年6月12日 城北病院 リウマチ科 中﨑聡先生より原稿を寄せていただきました。



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